1 はじめに
厚生労働省の統計によると,平成元年以降,離婚率は増加し,平成14年をピークに減少していますが,今なお高い水準にあります。弁護士への相談件数としても,多いように感じます。
ここでは,離婚について,簡単に説明したいと思います。
2 離婚に際して考えなければならないこと,決めなければならないこと
(1)離婚原因
まず,自分が離婚したいと思っても,当然に離婚できるわけではありません。相手が離婚に同意している場合は別ですが,相手が拒否している場合に離婚するためには,離婚原因(民法770条1項各号)がなければなりません。
相手に不貞行為があった(同項1号)などの明確な離婚原因がない場合は,婚姻を継続し難い重大な事由(同項5号)が必要です。その重要な判断要素の1つが,別居に関する事情です。別居期間や経緯等から,離婚できるかどうか(婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうか)を考えることになります。
(2)親権者・監護権者
離婚するに当たり,未成年の子供がいる場合には,親権者をどちらにするかを決めなければなりません。離婚届には親権者を書く欄があり,親権者を決めて記載しないと,離婚届は受理されません。
離婚の合意はできていても,親権をお互い譲らず紛争が長引くこともあります。母親がなることが多いと思われますが,両親の状況や子どもの福祉を考えて決めることになります。
(3)財産分与
夫婦が婚姻期間中に築いた財産は,特有財産を除いて,共有財産となり,その財産を(基本的には)半分ずつ分けることになります。これを財産分与と言います。
もっとも,プラスの財産だけでなく,マイナスの財産がある場合(よくあるのが,住宅ローンが残っていて,妻が連帯債務者や連帯保証人になっている場合)には,金融機関も交えた調整が必要となることもあります。
(4)慰謝料
離婚をする場合には,必ず慰謝料が発生すると思っている方も多いのですが,そうではありません。法的に慰謝料を請求するためには,相手に不貞行為やDVなどの不法行為が必要です。
なお,前記財産分与の中に,慰謝料的な意味合いを込めて,半分よりも多くもらうということはあります。
(5)養育費の算定
未成年の子の親権者となった場合,相手に対して養育費の請求ができます。養育費は,子どもの監護に必要な費用ですが,必ずしも成人(20歳)までとは決まっていません。
養育費は原則,毎月発生するものであり,権利者(親権者)と義務者(相手方)の年収を元に,算定表を参考にして,金額を決めます。
(6)面会交流の取決め
未成年の子どもがいる場合には,親権者でない親と子どもが面会する機会を設けるのが一般的であり,子どもの福祉にとっても望ましいことです。
頻度・場所・日時・方法などを決めて実施することになりますが,子どもの福祉には配慮する必要があります。
(7)年金分割
同居期間が長く,専業主婦であった場合などは,夫の年金の支払 実績を分けてもらう必要があり,半分の0.5とすることが多いです。
3 離婚手続きの種類及び特徴
離婚手続きの種類及び特徴については,以下にまとめたとおりです。
(1)協議離婚
・当事者双方に明確な離婚意思がある場合に選択します。
・当事者(又は代理人)同士の話し合いで進めます。
・相手方との間で,財産分与,慰謝料,養育費などの取り決めを行います。
・未成年の子どもがいる場合,親権者は必ず決めます。
・合意ができた場合,離婚協議書を作成します。
・養育費等の分割払いの給付がある場合,履行確保のため公正証書を作成することもあります。
(2)調停離婚
・協議離婚の合意ができない場合に選択します。
・第三者的立場にある裁判所の調停委員会が間に入って話合を進めます。
・一方ずつ入室させて当事者が対面しない形で,当事者双方の意向を確認し,争点を整理して,調整を行います。
・DV事案の場合などでは,当事者が鉢合わせしないように,待合室を離れた場所にしたり,出頭時刻・退出時刻をずらしたりするなどの調整も可能です。
(3)裁判離婚
・調停が成立しなかった場合に選択します(調停前置主義)。
・離婚原因を主張・立証する必要があります。
・離婚に伴う附帯処分として,財産分与や養育費等を請求します。
・相手方が有責配偶者の場合は慰謝料請求も行います。
(4)婚姻費用分担調停
・別居中などで生活に困窮している場合,離婚が成立するまでの間,婚姻費用の分担を求めて調停を申し立てることがあります。
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